Lecture I | 「心理物理学入門:まずは体を動かそう」 | |
講師:山本 慎也(産業技術総合研究所) | ||
Lecture II | 「ベイズで読み解く知覚世界」 | |
講師:神谷 康之 (ATR脳情報研究所) | ||
Lecture III | 「視覚的意識研究の最前線:脳イメージング、電気生理からの知見と求められる理論」 | |
講師:渡辺 正峰(東京大学 工学系研究科) | ||
Lecture IV | 「神経経済学入門 I: 自然界で脳はどのように最良な行動を選択していくのだろう?」 | |
講師:酒井 裕(玉川大学 工学部) | ||
Lecture V | 「神経経済学入門 II: 社会の中で脳はどのように意思決定していくのだろう?」 | |
講師:鮫島 和行(玉川大学 学術研究所) | ||
招待講演 I | 「計算論的神経科学ー小脳内部モデル、システム生物学、操作脳科学」 | |
川人 光男(ATR脳情報研究所 所長) | ||
招待講演 II | 「部分観測環境における意思決定のモデル」 | |
石井 信(奈良先端科学技術大学院大学) | ||
13:00-13:20 開催の辞
13:20-14:20 事前知識レクチャー
14:20-17:00 演習
17:00-18:00 演習発表及びレクチャー
19:00-21:00 Welcome party
9:00- 10:00 事前知識レクチャー
10:00-12:00 演習
12:00-13:00 昼食
13:00-14:00 演習発表及びレクチャー
近年の脳計測技術の進歩により、脳科学者の間で長年タブー視されてきた意識のメカニズムにようやくメスが入ろうとしている。本レクチャーでは、意識研究の中でも"visual awareness"(視覚的意識)と呼称される、視覚体験を生む意識のメカニズムの解明に向けての取り組みの最前線とその限界について紹介し、今後の発展においてモデル的な視点が必要不可欠となることを伝えたい。
視覚的意識研究の発端となったのは、両眼視野闘争下で知覚交代を起こしている最中のサルのニューロン活動を記録したLogothesisらの歴史的研究である。両眼視野闘争とは、二つの目に異なる刺激を入力したときに、それらが混ざり合ったものとして知覚されるのではなく、数秒おきに左目と右目の刺激が交代するかのように意識される現象である。ここでポイントとなるのは、物理的な刺激は変化しない中で知覚がビビッドに切り替わる点である。Logothesisらは、「視覚的意識を担う脳部位」であれば、ボタン押しによって報告されるサルの知覚体験と連動してニューロン活動が変動するはずであると考え、低次から高次までのさまざまな視覚系脳部位について系統的に計測を行った。その結果、大脳皮質への視覚信号の入り口となる第一次視覚野では20%程度のニューロンが統計的有意に変動したのに対して、形態認知の最終領野となるIT野では、80〜90%のニューロンが変動することが分かり、その解釈についてさまざまな議論がなされている。特に問題となったのは、第一次視覚野の果たす役割である。DNA二重螺旋構造の発見で有名なCrickは、第一次視覚野は網膜と同様"見る"ために必要ではあるが、それは視覚信号の中継地点に過ぎず、視覚的意識そのものを表現されているわけではないと主張し、視覚的意識研究の火付け役となった。裏をかえせば、意識を担う部位は一握りであることを意味する。それを受ける形で、第一次視覚野が視覚体験を生むために本質的に重要であり、単なる中継基地以上の役割を担うとする説は、数多くの脳研究者によってさまざまな形で唱えられている。
現時点では、心理物理、電気生理、脳イメージング等からの知見により、後者の仮説に軍配があがりつつある。そのなかで焦点となっているのが、高次から低次の領野間をつなぐトップダウン結合である。しかし、高次領野からの神経投射の実効的な相互作用の正負についても未だ議論が多い中で、その具体的な中身についてはほとんど手付かずといってよい。今後、視覚的意識のメカニズムを解き明かす鍵となるのは、トップダウン結合の機能であり、第一次視覚野に目を向ければ、それが視覚野全体のダイナミクスにいかなる作用を及ぼすかということになるであろう。単なる現象論を超えて、いよいよモデル的な視点が必要な段階に入ったと言っても過言ではない。レクチャーでは、領野間相互作用のさまざまな脳モデルを紹介し、それらと視覚的意識研究の間に接点をみつけ、真の意味でのメカニズム解明に向けての研究の方向性について議論していきたい。
14:30-15:30 事前知識レクチャー
15:30-18:00 演習
18:00-19:00 夕食
19:00-20:00 演習発表及びレクチャー
我々人間も含め、動物が生き残っていくためには、より多くの餌を得て生存の危険を避けるために適切な行動を選択しなければいけません。選んだ行動の結果は必ずしも一定しているとは限りません。同じ状況で同じ行動を選択しても、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあります。そんな中で試行錯誤して、できるだけ高い確率でうまくいくような行動を選択できるように学習していかなければなりません。では、一体、脳でどのように最良な行動選択を学習していくのでしょうか。
動物の脳における学習のメカニズムを調べるためには、学習が失敗する場合に成り立つ法則を調べる方法が有効です。動物にいくつかの選択肢の中から1つを選択させ、その選択に応じて確率的に餌を与えるような課題を実行させた場合を考えましょう。餌を与える確率法則が単純な場合、動物は平均的に最も餌が獲得できるような行動選択をするようにないります。しかし、餌を与える確率法則を少し複雑にしますと、餌の平均獲得量が最大となるような行動選択ができないことがあります。このような場合に動物が示す行動を調べると、「マッチングの法則」と呼ばれる法則が成り立っていることが知られています。
「マッチングの法則」を実現するような学習メカニズムはいくつか提案されていますが、なぜ動物が「マッチングの法則」を示すのか、未だ謎とされています。この講義では、「マッチングの法則」がなぜ顕れるのか、そのためには脳の中でどのような学習メカニズムが使われている必要があるのか、議論していきます。9:00- 10:00 事前知識レクチャー
10:00-12:00 演習
12:00-13:00 昼食
13:00-14:00 演習発表及びレクチャー
自然な環境の中で、私たち人間を含めた生物が生き残るには、より高い確率で餌を得る、危険を避ける、などの適切な行動を取る必要があります。神経経済学入門第1部では、動物を例に確率的に振舞う環境の中でいかにして最適な行動選択を学習するか、という問題設定をあつかいました。しかし、私たち人間は、他人との関わりの中で意思決定を行っています。自然は、私たちの行動を予測はしません。すなわち自分が行動戦略をいかに取ろうと自然の振る舞いには基本的には無関係です。しかし、他人は自分がどう振舞うかによって、その振る舞いを変更してきます。私たちの脳は、このようにより激しく、しかも自分との関わりで変動する、他者との関わりの中で、如何にして意思を決定しているでしょうか?
本講義では、第1部で扱うような定常な確率を持つ環境の問題設定から出発し、その環境の中での行動選択を説明するメカニズムの1つである強化学習の枠組みを説明します。また、強化学習を行うのに重要な要素と動物実験から得られる神経活動との比較し、強化学習が脳で実現されるとしたら、どのような回路がどのような計算を行うのかを論じます。さらに、他者の振る舞いを想定したときには、強化学習に何がたりないのか、どういう機能や理論を必要とするのか、一緒に考えて見ます。最後に、他者との関係を想定した最近の動物実験やヒトの行動実験、機能的脳画像(fMRI)の知見を紹介しながら、他人と駆け引きを数理モデル化する経済学と、脳における意思決定を研究する神経科学を組み合わせた境界領域である神経経済学とはどういった領域なのかを概観してゆきます。
14:30-15:30 事前知識レクチャー
15:30-18:00 演習
18:00-19:00 夕食
19:00-20:00 演習発表及びレクチャー
9:00- 12:00 講演
12:00-13:00 昼食
13:00-15:00 講演
15:00-16:00 討論会