ASCONE 「脳科学への数理的アプローチ」

脳を数理で解き明かそう 〜実験的アプローチとの融合〜

脳の世界の謎は、人類の英知に最後に残された大きな砦です。 この数十年で、脳の中を観測する技術は飛躍的に進歩してきました。 しかし、実験的観測だけではどうにもならない謎が脳にはあります。 この謎を解く鍵となるのは、 物理学や情報学の世界で力を発揮してきた数理的アプローチです。 数理的アプローチによる脳の理解の一端を経験しながら、 脳科学への扉を開いてみましょう。

これまでにASCONEに参加したたくさんの方々が、脳科学の分野で若手のホープとして活躍しています。
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 同窓会 2016 2017 2018 2019 2022
 
ASCONEの参加者たちが立ち上げた脳科学若手の会は、脳科学分野に多大な貢献をしています。
若手の会もASCONEも利用してつながりを築き、未来につなげましょう。
 
参加者からのメッセージ 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2022
 
 
 
 

日本神経回路学会 オータムスクール

ASCONE2023

Autumn School for Computational Neuroscience

2023年11月28日(火)〜 12月1日(金)  ホテル一宮シーサイドオーツカ(JR上総一ノ宮駅)

Poster
2023年の審査結果をメールで送付しました。

講師

Lecture I: 『機械学習 ✕ 脳科学:学習と記憶のメカニズムから』

深井 朋樹(Okinawa Institute of Science and Technology)

Lecture II: 『脳が生きているとはどういうことか』

毛内 拡(お茶の水女子大学)

Lecture III: 『計算論的精神医学:精神医学における数理・データ科学の役割と展望』

山下 祐一(国立精神・神経医療研究センター)

Lecture IV: 『予測ってなんだろう:予測的な行動の神経機構』

濱口 航介(京都大学)

Lecture V: 『脳機能イメージングと機械学習』

近添 淳一(株式会社アラヤ)

講義形式

1講師1トピックについて、主に以下のスケジュールで行っていきます。
  1. 「基礎講義」(約1時間)
    問題意識までの導入を行います。 例えば、不思議な脳の現象などを紹介し、 その問題を考えるための材料を提供します。
  2. 「グループ討論」(約2〜3時間)
    小グループに分かれて、提示された問題について自ら考えながら、 チューター、講師らと共に討論します。 最終的にそのグループの意見として全体に発表できるように、 意見をまとめていきます。
  3. 「グループ発表」(約30分)
    各グループで行った討論の結果を代表者が全体に発表します。
  4. 「発展講義」(約30分)
    講師による解説を行います。

講義スケジュール(予定)

11月28日

14:20- 受付 (昼食を済ませてから集合してください)

14:50- 開催の辞

Lecture I: 『機械学習 ✕ 脳科学:学習と記憶のメカニズムから』

深井 朋樹(Okinawa Institute of Science and Technology)

脳の面白さは、複雑な環境に適応する行動原理を自ら学習する能力にある。また誰もが知るように、脳の学習能力を巧妙に模倣するAIが近年、急速に発展してきた。このような学習や記憶の神経基盤は、神経細胞間のシナプス結合が活動度依存に伝達効率を変化させる、シナプス可塑性であると考えられている。シナプス可塑性に関して、半世紀以上にわたり、多くの実験的、計算論的研究が行われてきた。また近年は機械学習のアルゴリズムを脳科学に逆輸入する試みもある。そこで本講義では以下のような内容について議論する。

基礎講義 - さまざまなシナプス可塑性のモデル
単一神経細胞による教師なし学習に関して、基礎的内容から少し発展的な内容までを議論する。具体的にはスパイク時間依存のシナプス可塑性(STDP)の実験と計算論的モデルや、ベイズ計算や予測学習から導かれるシナプス可塑性規則と計算論的機能について学ぶ。時間の都合上、教師付き学習には触れない。

発展講義 - 記憶の回路モデルの最近の動向
近年、概念学習や自然言語処理との関係が指摘されるなど、海馬や嗅内野による空間ナビゲーションが、脳科学とAIの両面から注目されている。この流れを踏まえ、連想記憶モデルなどの最近の研究について紹介する。

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

19:00-20:00 グループ発表

20:00-20:30 発展講義

11月29日

Lecture II: 『脳が生きているとはどういうことか』

毛内 拡(お茶の水女子大学)

脳が生きているとはどういうことでしょうか。身体の健康寿命が延長する一方、脳やこころの健康についての理解は未だ不十分です。脳が健康で正常に機能しているとはどういうことか改めて問い直す必要があります。脳研究では、これまで、ニューロンのシナプスを介した速くて精緻なデジタル的な相互作用に関する研究が中心的に行われてきました。しかし、脳の情報伝達には、グリア伝達、神経調節物質の拡散性伝達、広範囲調節系、脳脊髄液と間質液の交換や細胞外電場による非シナプス的な相互作用が重要な働きをしています。私はそれを「脳のアナログ情報伝達」と呼び、その未知なるメカニズムの解明に取り組んでいます。脳のアナログ情報伝達が破綻した場合に生じる病態や、脳のアナログ情報伝達の正常化による治療法等について研究しています。

10:00-11:00 基礎講義

11:00-12:30 グループ討論

12:30-13:30 昼食

13:30-14:30 グループ発表

14:30-15:00 発展講義

Lecture III: 『計算論的精神医学:精神医学における数理・データ科学の役割と展望』

山下 祐一(国立精神・神経医療研究センター)

現行の精神障害の診断分類は、患者自身の主観的報告と医師による行動観察に基づいており、生物学的知見・病因・病態生理に基づいた体系にはなっていません。また、近年の生物学的知見の蓄積によっても、診断、重症度評価、予後や治療反応性予測が可能な生物学的指標が確立されていないという問題を抱えています。近年の、計算機性能の飛躍的な向上や、数理科学の洗練により、精神医学が直面するこれらの問題克服に、数理モデル(脳計算理論)やデータ科学を用いた手法を適用することへの期待が高まっています。このような研究は、「計算論的精神医学(Computational Psychiatry)」と総称されて活発な研究領域を形成し、精神医学研究において重要な位置を占めると目されるようになっています。本講義では、計算論的精神医学の代表的な研究方略を概観し、具体的適用事例を紹介します。続いて、グループ討論では、計算論的精神医学の現状とその進展の可能性を整理し、直面している限界や、特に重点的に検討すべき研究課題について議論します。

15:30-16:30 基礎講義

16:30-18:30 グループ討論

19:30-20:30 グループ発表

20:30-21:00 発展講義

11月30日

Social activity

9:00-14:30 ポスター発表・散策・昼食

Lecture IV: 『予測ってなんだろう:予測的な行動の神経機構』

濱口 航介(京都大学)

動物が環境について何も知らない時,何が良い行動か分からず,行動選択は試行錯誤的にならざるを得ません.環境について学習した後は,自分自身の行動によって環境がどう反応・変化するか予測できるため,予測に基づく柔軟な行動選択が可能になります.ヒトや動物の多くが,何等かの形で,環境に関する「知識」を用いた予測的な行動選択を行っているという証拠がありますが,その神経メカニズムはよくわかっていません.本講義では,「予測的な行動選択」の神経メカニズムを調べるための理論と実験について紹介します.脳が実装する行動選択のアルゴリズムを理解する事で,変化する現実世界で適切な行動を選ぶ人工知能の開発や,不適切な行動をしてしまう病的な脳の状態を理解するための,重要な知見が得られると期待できます.

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

討論課題:
  • 予測が必要な認知課題を一つ考え,これを解くアルゴリズムを提案し,脳内での実装の可能性について議論してください.
  • 発表では,他のグループの参加者に予測が必要な認知課題を解かせた後で,提案アルゴリズムを発表してください.

19:00-20:00 グループ発表

20:00-20:30 発展講義

12月1日

Lecture V: 『機械学習と機能的MRI研究』

近添 淳一(株式会社アラヤ)

機能的MRIは非侵襲的に人間の高次認知機能を調べることができるツールであって、近年の神経科学研究においては欠かすことのできない基盤となっています。特に、機械学習を応用することにより、様々な知見がえられており、本講義では、その基礎と応用例を概説します。

9:00 -10:00 基礎講義

10:00-12:00 グループ討論

12:00-13:00 昼食

13:00-14:00 グループ発表

14:00-14:30 発展講義

15時頃 解散

対象:脳科学の数理的アプローチに興味を持っている方

大学院進学を考えている学部学生、大学院生、ポスドク研究員など。
 
定員:20名程度(応募者多数の場合、応募資料により審査を行います)
 
注: 既に数理的アプローチで脳研究を行っている方には、 チューターをお願いするかもしれません。

受講者 参加費無料(合宿形式;全日程参加可能な方限定)

応募日程

応募の取消、応募情報の修正は次のアドレスにメールでご依頼ください。

応募方法

以下の情報を応募サイトで登録していただきます。
  1. 氏名・所属・連絡先等  
  2. 脳に対する興味を800~1000字程度でまとめた文章
    • 興味のある脳の現象を具体的に挙げ、自分の考えを述べてください。
    • 事前知識の量は問いません。 専門的でなくても、身近な話題で構いません。 脳に対する興味の強さと論理的な文章力を審査の対象とします。
    • 氏名・所属を伏せて審査します。 この文章中には、 個人が特定できるような人間関係などの情報を記載しないでください。
    • 当落線上の判断においては、ジェンダーバランス・参加歴等を参考にすることがあります。
 
 
 
個人情報の取り扱いについて
  • ASCONEに関する諸連絡(審査結果、案内など)に用います。
  • E-mailには、次年度以降のASCONEのご案内を送信させて頂くことがあります。
  • ASCONE応募者ならば興味の持ちそうであると我々運営委員が判断した場合、 研究会などの案内を転送する場合があります。
  • 以上の送信停止希望はいつでも承ります。
以上のことを同意の上、ご応募ください。
その他の留意事項
  • 新型コロナウイルス感染症対策にご協力ください。
    • ワクチン3回接種や不織布マスク着用をお願いする予定です(特段の事情があれば別途考慮します)。
  • 講義を録画したり、討論内容を外部公開しないよう求める場合があります。同意できない場合にはすみやかにその旨を表明してください。
以上のことを同意の上、ご応募ください。

運営

寺島 裕貴(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
平 理一郎(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
瀧山 健 (東京農工大学 工学研究院)
船水 章大(東京大学 定量生命科学研究所)
佐々木 拓哉(東北大学 薬学部)
鮫島 和行(玉川大学 脳科学研究所)
酒井 裕 (玉川大学 脳科学研究所)

主催

日本神経回路学会

共催

学術変革領域(文部科学省 科学研究費補助金)