Lecture I | 『個体間を繋ぐ認知機構と、関係性の構築の内分泌制御』 | |
講師:菊水 健史(麻布大学 獣医学部) | ||
Lecture II | 『霊長類動物を対象とする社会システム神経科学』 | |
講師:磯田 昌岐(関西医科大学 医学部) | ||
Lecture III | 『"Model-based fMRI"で探る社会的意思決定の神経機構』 | |
講師:鈴木 真介(California Institute of Technology) | ||
Lecture IV | 『ヒトの協力行動における直感と熟慮について』 | |
講師:春野 雅彦(脳情報通信融合研究センター;CiNet) | ||
Lecture V | 『助け合うことの不思議』 | |
講師:平石 界 (慶應義塾大学 文学部) | ||
Lecture VI | 『イワンの馬鹿とホモエコノミカス:社会秩序の2つの基盤』 | |
講師:山岸 俊男(一橋大学大学院 国際企業戦略研究科) | ||
12:30- 受付 (昼食を済ませてから集合してください)
13:00-13:15 開催の辞
講師:菊水 健史(麻布大学 獣医学部) |
アリストテレスはいう「Politics I.2, that human beings are by nature political animals, who naturally want to live together.」ヒトの特性は、広範な共同社会を構築し、お互いに助け合い、協力しあう社会であると。このような特性はヒトが特異的に獲得したものの、その根源となる機能、すなわち個体間が親和的な関係性を構築し、他者を受け入れ、仲間になり、やがて群れという社会を構築する、という神経科学的プロセスは、他の哺乳類でも観察される。このような他者を受け入れ、関係性を作り上げるためには、適切な社会認知機構と、それを支える内分泌応答が必要である。この個体間のやり取り、それを元に変化する個体の内的状態、をどのようにモデル化できるのだろうか。今回は生理的、行動学的視点から現象的な事実の紹介をし、その後、みなさんに、このモデル化を是非トライしてもらいたい。
13:15-14:15 基礎講義 14:15-16:15 グループ討論 |
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討論課題:
「絆を構築する社会刺激と神経内分泌の連携メカニズムを考えよう」
個体間を繋ぐ絆の形成には、3種類のポジティブループが考えられる。1つ目は絆を形成する個体と個体のやりとりによるループ、2つ目は個体内で過去の経験により促進されるループ、3つ目には被養育経験が自身の養育行動に影響を与え、世代を越えて遺伝子を介さずに養育行動が伝承されるループである。一見、相手に示している行動が同一であっても、このポジティブループが回り始める場合もあれば、逆に攻撃的な意味をなす場合もある。このポジティブループに神経内分泌が関わっていることがわかっているが、他個体から示される社会的刺激や自身の行動と神経内分泌がどのように連携して、3つのポジディブループが回るのだろうか? |
16:15-16:45 グループ発表 16:45-17:15 発展講義 |
18:00-19:00 夕食
19:00-21:00 Welcome party
21:00-24:00 Poster Session
講師:磯田 昌岐(関西医科大学 医学部) |
ヒトを含む霊長類動物が進化の過程で獲得した様々な知や技能は、社会における個体の生存・適応と社会全体としての生存・適応に最適化されたものであると考え、社会的認知機能の神経基盤を解明すべくサル類を用いたシステム生理学的研究を行っている。そのような実験研究においては、まず社会的認知機能の重要側面を捉え、それを霊長類動物が実行可能でしかも適切に統制された行動課題のなかに再現することが重要になる。そのうえで、課題を遂行する動物の脳内から神経細胞活動の記録・解析等を行い、各神経細胞や神経ネットワークのはたらきを明らかにしていく。今回の講義では、「自己と他者の区別」と「自己と他者の比較」という認知側面に焦点をあて、2頭のサルを同時に用いた新しい実験研究のストラテジーを紹介しながら、各々の神経機構について議論したい。
9:00 - 10:00 基礎講義
10:00-12:00 グループ討論
12:00-13:00 昼食
13:00-13:30 グループ発表
13:30-14:00 発展講義
講師:鈴木 真介(California Institute of Technology) |
我々ヒトが社会の中で適切に振る舞うためには、他者の意図や行動を先読みし、それを踏まえて最適な意思決定を行う必要があります。 この「社会的意思決定」の神経メカニズムを、計算論的アプローチと脳イメージングを組み合わせる(i.e., Model-based fMRI)ことで、どこまで明らかにできるでしょうか? この講義では、まずModel-based fMRIについて概観します。 その後、具体的な研究課題として他者行動予測課題と合意形成課題を取り上げ、社会的意思決定の神経機構を議論する予定です。
15:00-16:00 基礎講義
16:00-18:00 グループ討論
18:00-19:00 夕食
19:00-19:30 グループ発表
19:30-20:00 発展講義
21:00-24:00 ポスターセッション
Lecture IV 『ヒトの協力行動における直感と熟慮について』講師:春野 雅彦(脳情報通信融合研究センター;CiNet) |
協力行動はヒト社会の基盤です。 近年の研究の進展により協力行動はいくつかの異なる計算過程からなる複合的な実態であることが明らかにされて来ました。 今回の講義では、直感と熟慮という観点から、協力行動を産みだす神経メカニズムとその意味することを皆さんと一緒に考えます。
9:00 - 10:00 基礎講義
10:00-12:00 グループ討論
12:00-13:00 昼食
13:00-13:30 グループ発表
13:30-14:00 発展講義
Lecture V 『助け合うことの不思議』講師:平石 界 (慶應義塾大学 文学部) |
ヒトという動物の特徴の一つに巨大な協力的集団を形成することがある。本講義では、自然淘汰理論から見たこの特徴の不思議さについて解説をする。その上で、集団協力場面を単純化した社会的ジレンマゲームをその場で実施し、社会心理学実験の現場で何が生じているのか、実験者と参加者の両方の立場から理解することを目指す。
15:00-15:30 基礎講義
15:30-16:30 社会的ジレンマゲーム体験
16:30-17:00 グループ作業(ゲームのパラメータ設定→実装)
17:00-17:30 実験実施
17:30-18:00 分析とプレゼン準備
18:00-19:00 夕食 19:00-19:30 グループ発表 19:30-20:00 発展講義 |
21:00-24:00 ポスターセッション
講師:山岸 俊男(一橋大学大学院 国際企業戦略研究科) |
社会科学では古くから、社会秩序の説明に2つの原理が用いられてきた。一つは制度による説明であり、もう一つは規範の内面化による説明である。ヒトの向社会性の説明原理を向社会的選好の進化基盤に求める現在の行動経済学の理論展開は、規範の内面化のアイディアを、内面化を促進する心的メカニズムの進化によって補強する動きとして捉えることができる。こうした近年の研究の中で軽視されてきたのは、社会科学の根本問題である制度構築の観点であり、社会的選好と制度との共進化(社会的ニッチ構築)の観点である。本講義では、(規範の内面化が完璧になされている)イワンの馬鹿を基盤とする社会秩序から、合理的なホモエコノミカスを基盤とする社会秩序への移行が可能かどうかを考えるために、私たちは何を研究すべきかについて、出席者の皆さんと一緒に議論したい。
9:00 -12:30 講義
12:30-13:30 昼食
13:30-15:00 全体討論
解散