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日本神経回路学会 オータムスクール

ASCONE2019 『脳科学と数理の未来』

Autumn School for Computational Neuroscience

2019年11月8日(金)〜 2019年11月11日(月) 諏訪レイクサイドホテル(JR上諏訪駅 シャトルバス10分)

厳正な選考の結果、28名の採用を決定いたしました。

講義スケジュール

1講師1トピックについて、以下のスケジュールで行っていきます。
  1. 「基礎講義」(約1時間)
    問題意識までの導入を行います。 例えば、不思議な脳の現象などを紹介し、 その問題を考えるための材料を提供します。
  2. 「グループ討論」(約2〜3時間)
    小グループに分かれて、提示された問題について自ら考えながら、 チューター、講師らと共に討論します。 最終的にそのグループの意見として全体に発表できるように、 意見をまとめていきます。
  3. 「グループ発表」(約30分)
    各グループで行った討論の結果を代表者が全体に発表します。
  4. 「発展講義」(約30分)
    講師による解説を行います。

11月8日

12:30- 受付 (昼食を済ませてから集合してください)

13:00-13:15 開催の辞

Lecture I: 『脳は本質的に複雑だろうか』

平 理一郎 (UC Santa Barbara)


このLectureは次のような2部構成とします。第一部では覚醒動物における大規模神経活動記録の現在と今後の技術的見通しを述べます。特に2光子多細胞カルシウムイメージングについての技術と情報科学的課題について紹介します。第二部では、莫大な数の神経細胞活動を同時計測することで、脳の計算原理が理解できる見通しがあるかについて問います。そもそも、脳は数理的な原理や法則で理解しようとすることで本質に近づくことができる対象なのでしょうか。ここでは「本質的に複雑なシステム」という概念を導入することでこうした問題に対して思考を深めていきます。

グループ討論 では次の2つを議題とします。まず第一部に関して、脳の複雑な活動の全体を理解するためにはどのように神経細胞活動を記録する必要があるのかを考えていただきたいと思います。ここでは当然、「全体」や「理解」という語が未定義です。そして第二部に関しては、脳が本質的に複雑なシステムかどうかについて、またその理由について、さらにそうしたシステムの固有性について自由に思いを巡らせて欲しいと考えています。挑発的なアイデアを期待します。

13:15-14:15 基礎講義

14:15-16:15 グループ討論

討論課題:
  • 「脳の複雑な活動の全体を理解するためにはどのように神経細胞活動を記録する必要があるのか?」
  • 「脳が本質的に複雑なシステムかどうか? またその理由は? さらにそうしたシステムの固有性は?」

17:00-18:00 グループ発表

18:00-18:50 発展講義

19:00-21:00 Welcome party

21:00-24:00 Poster Session

11月9日

Lecture II: 『エピソード記憶をつくる神経回路の考察』

佐々木 拓哉 (東京大学大学院 薬学系研究科)


エピソード記憶は、時間や場所の情報を含む陳述記憶です。エピソード記憶があるからこそ、私たちは思い出を作ることができ、一人一人の人格の形成にも役立ちます。こうした記憶は神経回路に起因することは間違いありませんが、その全貌は現代の神経科学を以ってしても、未解明の部分が多く残されています。本講義では、私たちの日常生活にあふれる記憶が、どのような神経回路の演算によって実現されているか、皆さんで考えてみたいと思います。細かい知識を勉強するだけでなく、多少間違っていても大胆な発想が生み出されるような場になればと考えています。このように脳特有の記憶メカニズムを考察することは、機械による記録や情報処理との違いをあらためて認識することにもつながり、今後の機械学習の研究にも新たな示唆を与えてくれるものと期待します。

9:00 -10:00 基礎講義

10:00-12:00 グループ討論

討論課題:
  • 記憶を介した曖昧な(決定論的でない)行動を実現する神経回路メカニズムは何か?
  • そのような曖昧な情報処理の意義は何か?
  • それを検証するためにはどのような実験をすればいいか?

12:00-13:00 昼食

13:00-14:00 グループ発表

14:00-14:30 発展講義

Lecture III: 『脳の数理的理解の理解:聴覚モデルを題材に』

寺島 裕貴 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所)


ASCONEの参加者なら、脳を理解したいかと問われれば間違いなくyesと答えるでしょう。しかし、何が達成されれば脳を理解できたことになるのかをよくよく話しあってみると、実はひとりひとりが違ったイメージを持っていることに気付き、壁を感じることがあるかもしれません。あるいは実際に研究を進める中で、ふと、自分のやっていることは本当に理解に繋がるのだろうかと疑問を抱くことがあるかもしれません。

脳の理解において、数理的アプローチは強力です。しかし常に誰にとっても強力というわけではないし、その具体的な姿は千変万化で混乱を招くこともあります。脳の数理的理解とはいったい何なのでしょうか? そもそも理解一般についてわたしたちは何を知っているでしょうか?

数理的な理解の持つ力をより的確にとらえるために、この講義では、脳の数理的な理解そのものの「理解」を試みます。わたし自身は主に聴覚系を機械学習の概念と対応付ける計算モデル研究に携わってきましたが、同時に、理解という概念自体にも興味を持ってきました。今回は研究内容を単に紹介するというよりも、すこしメタな立場から見た際の捉え方を、モヤモヤも含めて整理・共有します。参加者の皆さまには、正解がない中で自身の理解をすこしばかりはより確かなものへと導くような、率直な意見のぶつけ合いを期待します。

参考文献(講義では事前知識を仮定しません):
寺島 (2018) 人工ニューラルネットワークで聴覚系を理解する, 日本音響学会誌, 74(7):401-406.

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

討論課題:
  1. あなたが目指す理解を言語化し、交換しよう
  2. 理論家と実験家の理解がすれ違う理由と処方箋
  3. 最適化以外に有用な操作は何かあるだろうか
  4. 脳の数理的理解とは何だろうか

19:00-20:00 グループ発表

20:00-20:30 発展講義

21:00-24:00 ポスターセッション

11月10日

Lecture IV: 『フリーエナジークリーチャーズ〜目指せベイズ最適〜』

磯村 拓哉  (理化学研究所 脳神経科学研究センター)


このワークショップでは、自由エネルギー原理(free-energy principle)に従う極々単純な人工生命”フリーエナジークリーチャー”のシミュレーションを教材とし、参加者の手で最適化したクリーチャー同士を勝負させていただきます。自由エネルギー原理はKarl Friston氏により提唱された、シンプルな法則により生物の知能を数理的かつ統一的に説明するための理論です[1]。この理論は、感覚入力のサプライズを最小化するように神経活動・シナプス結合・行動方策を最適化することで、生物はベイズ最適な推論・予測・意思決定を実行するとしています。講義では、自由エネルギー原理の数理的基礎および生物の脳・ニューラルネットが原理をどのように実装していそうかについて学んでいただきます。特に環境が離散状態空間である場合には、標準的なニューラルネットが何らかのコスト関数に基づいて適応・最適化を行うことは、暗に自由エネルギー原理に従っていることと等価であることを解説します[2]。グループワークでは、配布する雛形を基に、班ごとにクリーチャーのニューラルネットを改良して、外界の認識・予測および行動戦略を最適化してもらいます。そして、どのような方針で改良したかを成果発表した後、各班のクリーチャー同士を勝負させます。

参考文献
[1]Friston, K. (2010). The free-energy principle: a unified brain theory?. Nature Reviews Neuroscience, 11, 127–138.
[2] Isomura, T. & Friston, K. (2019). Reverse engineering neural networks to characterise their cost functions. bioRxiv:654467.
日本語解説「自由エネルギー原理の解説:知覚・行動・他者の思考の推論」

9:00 -11:00 基礎講義

11:00-13:30 グループ討論(12:00-13:00 昼食)

討論課題:
  • 各グループで、Java script で組んであるシミュレータ上のクリーチャーの推論・予測・意思決定を最適化し、 グループ間で勝負します。
  • 最適化の過程から、重要なポイントに絞って、神経回路・脳と結びつけて解釈・考察し、生物がどのように最適化を 行なっていそうか、論じてください。
  • 変分ベイズ推定と神経回路の等価性を使った面白い実験パラダイムを考えてください。

13:30-14:00 グループ発表

14:00-14:30 発展講義

Lecture V: 『既存理論の鳥瞰図を描く
         -身体運動制御・身体運動学習の統一的枠組みを目指して-』

瀧山 健 (東京農工大学大学院 工学研究院)


数々の研究者が多大な時間と労力を割き脳の性質を少しづつ読み解いてきた。魅力的な仮説が生まれ、検証され、淘汰され、また新たな仮説が生まれている。このような仮説の生成と検証を繰り返す中で、複数の仮説が乱立している状況は決して珍しくない。例えば身体運動学習の仮説としては、ベイズ仮説、複数時定数仮説、これらでは説明できない構造学習仮説、など関係性が明らかではない様々な仮説が乱立している。身体運動制御でも同様にシナジー仮説、Uncontrolled manifold仮説、など関係性が明らかではない様々な仮説が乱立している。これらの仮説の最終目標は、一貫して身体運動学習・身体運動制御を理解することであり、それぞれの仮説が各々異なる利点・欠点を有する。それならば、既存の仮説を統合する枠組みは、それぞれの欠点を克服すると同時に多くの利点を有する、身体運動学習・身体運動制御の性質を理解すること、に特化した強力な枠組みになることが期待できる。 本公演では、第一に身体運動制御、身体運動学習のいくつかの仮説を紹介する。グループ討論としては、それらの仮説を各々深める方法ないしは、複数の仮説を統合する枠組みの可能性について議論することを予定している。

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

討論課題:
  1. 特定の中枢神経系の機能を説明するために、異なるモデルが乱立することは自然な流れである。 特定の中枢神経系の機能を理解するために、どのようなモデルを提案するべきなのか?
  2. 身体運動を理解するためには、どうするべきか?
  3. 各班で身体運動以外の着目したい中枢神経系の機能を選択して、それを理解するためのアプローチを考えてください。

18:00-19:00 夕食

19:00-20:00 グループ発表

20:00-20:30 発展講義

20:00-24:00 ポスターセッション

11月11日

Lecture VI: 『知覚・認知と運動の相互作用:どこに研究のポイントがあるのか?』

羽倉 信宏 (脳情報通信融合研究センター)


神経科学分野においても、心理学分野においても、運動制御の研究と、感覚知覚・認知の研究は、 別分野の、脳の別領域の研究として行われてきました。その結果、感覚・知覚と運動は直列的な関係であり、 運動は高次の判断をただ単に外界に表現するためのもの、という形でとらえられてきました。 しかし、外界の認識と運動行為が密接に関与することは自明であり、 両者が相互に影響を及ぼしあうという研究結果が近年、蓄積されつつあります。 例えば、視覚と体性感覚は入力チャネルは独立していますが、統合されています。 では、運動と感覚の関係も、結局は多感覚統合と同じフレームワークの話なのでしょうか? それとも、何か根本的に異なる相互作用形式が存在するのでしょうか? 本レクチャー、およびグループ討論では、上記の点について一緒に考えていきましょう。

9:00 -11:00 基礎講義

11:00-13:30 グループ討論(12:00-13:00 昼食)

討論課題:
  • 身体運動と知覚が連関するとき、どんな場面で、どのようなものを「共通の目的」として統合するか?
  • 知覚の研究に身体運動は必要か? 何が言えればそう言えるのか?
  • 機械学習は身体運動と知覚の連関の研究に有用か?
  • 身体と脳の違いとは何か?

13:30-14:30 グループ発表

14:30-15:00 発展講義

解散

運営

鮫島 和行(玉川大学 脳科学研究所)
酒井 裕 (玉川大学 脳科学研究所)
田中 宏和(北陸先端科学技術大学院大学)
筒井健一郎(東北大学 生命科学研究科)
山本 慎也(産業技術研究所)
渡辺 正峰(東京大学 工学系研究科)

主催

日本神経回路学会

共催

新学術領域研究(文部科学省 科学研究費補助金)