14:20- 受付 (昼食を済ませてから集合してください)
14:50- 開催の辞
通常のエンジニアリング(フォワード・エンジニアリング)では,実現したいこと(要求機能)を明確にし,具体的なメカニズム(機構)や構造を決めていきます.リバース・エンジニアリングでは,実物の機構や構造を整理したうえで,その設計者が考えたであろう要求機能を推測します.
「脳をリバースエンジニアリングする」とは,実験で明らかになった事実やデータに基づき,脳の要求機能,つまり,そもそも脳は何のためにあるのかを考えることです.人工知能の急激な発展もあり,人工知能は脳を超えるのではないかと喧伝されています.しかし,人工知能が脳を超えるとはどういうことでしょうか? 人工知能と脳は,共通の要求機能のもとに発達してきたのでしょうか? そのような視点から,脳の情報処理システムとしての特徴を考察します.
グループ討論では,リバースエンジニアリングにより,脳と人工知能・計算機を対比しながら,構造から要求機能の各階層で両者の特徴を整理します.その結果に基づき,次世代のニューロモルフィック計算機に実装すべき要求機能,あるいは,これからの神経科学で研究すべきテーマを議論しましょう.
15:00-16:00 基礎講義 16:00-18:00 グループ討論 |
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19:00-20:00 グループ発表 20:00-20:30 発展講義 |
多くの脳領域で、特定の情報に対応して活動する神経細胞が見つかっています。こうした神経表象が脳機能の基盤と考えられ、細胞の活動パターンが精力的に研究されています。一方で、神経表象がどのような分子・細胞・回路メカニズムにより生成され、また、生成された表象がどのように活用されるかは、ほとんど分かっていません。本講義では、海馬の空間表象 (場所・方向・道順などの情報表現) を題材に、その生成機構について考えます。半世紀前に発見された場所細胞の生成機構はどこまで分かっているのか、なぜまだ決系的な理解に達しないのか、そもそも何が分かれば理解したことになるのか、先行研究を概観しつつ考察します。そして、現状を乗り越え、神経表象の生成原理を解明するにはどうすれば良いか、皆さんで考えたいと思います。自由な発想が生まれる場となることを期待します。
9:00 -10:00 基礎講義
10:00-12:00 グループ討論
12:00-13:00 昼食
13:00-14:00 グループ発表
14:00-14:30 発展講義
乳幼児の認知発達はどのような神経基盤に支えられているのだろうか.乳幼児が獲得する社会性やそこに内在する個性の発生機序は,まだ未解明な部分が多い.本講演では,脳の統一原理とされる予測符号化理論に基づいた計算論的研究を紹介する.講演者は,感覚信号と予測信号の誤差,つまり予測誤差を最小化する過程が認知発達を導くと提案してきた.予測符号化に基づく神経回路モデルを用いて,予測機能の学習とその変調が,さまざまな認知機能の発達と多様性を生じることを示してきた.これらの結果に基づいて,自閉スペクトラム症などの発達障害者の理解と支援を目指す取り組みについても紹介する.
15:00-16:00 基礎講義
16:00-18:00 グループ討論
19:00-20:00 グループ発表
20:00-20:30 発展講義
9:00-13:30 散策・昼食
生きている動物の神経活動から背後の回路構造を同定することは神経科学研究に必要とされる基本的な技術である.各国のコネクトームプロジェクトにより詳細な回路図が得られつつある今日にあっても,認識・行動とともに駆動する責任回路を活動から特定する事の重要性は失われない.従来,そのような回路構造は2つの神経細胞間の相関解析を網羅的に行うことで推定されてきた.しかし,この手法は観測された神経細胞間の結合を探す手法であることに注意する必要がある.大規模記録が可能になったとはいえ,一部のモデル動物を除き記録される神経細胞群は全体のごく一部である.観測された神経細胞は観測外の神経細胞からの影響を受けており,特に観測外の神経細胞からの共通入力によって相関を伴う様々な活動を示しうる.そこで,観測外の神経細胞からの共通入力の構造を観測された神経細胞の集団活動から特定できないかという疑問が湧く.神経細胞集団の活動の統計構造は回路構造だけでなく,シナプス入力がどのようにシナプス後細胞の発火に至るのかという神経細胞の非線形な入出力関係にも依存する.逆にいえば,この関係に関する仮説のもとで集団活動の統計構造から回路構造を推定できる可能性がある.最近の研究で,興奮・抑制がバランスした生体内の神経細胞活動の入出力関係を表す理論式をもとに,3つの神経細胞の高次を含む相関構造から共通入力の結合構造とそのタイプ(興奮/抑制)を推定する手法を構築している.今回のチュートリアルではこの手法を解説し,これ用いてAllen Institueの大規模データの解析を行ってもらう.様々な脳の部位や入力刺激の違いによって回路構造がどのように変化するか,またはしないのかを確認し,議論・考察してもらう.
13:30-14:30 基礎講義
14:30-16:30 グループ討論
16:30-17:30 グループ発表
17:30-18:15 発展講義
私は35年間の長きにわたって大学の物理教室に勤めながら神経科学に関わってきました。定年退職した後は研究所の客員研究員をしています。この講演では、人生のいくつかの岐路で自分がなにを考えてどういう選択をしてきたかをご紹介したいと思います。教育では物理に関わりながら研究では神経科学に関わる、という独特な立ち位置に強い思い入れはあったのでしょうか。あらためて「私には神経科学への愛はあるんか?」ということを自分に問いかけてみたいと思います。大学を退職して物理学にも神経科学にも義理はなくなった今、「けっきょく自分にとってどういうことが大事なのか」について考えてみたいと思います。
19:30-20:30 特別講演
ヒトの脳神経系は、視聴覚などの物理的な感覚入力や主観的な情動、記憶の想起や未来の予測、新たな事業や科学等に関する抽象的な概念など、多様な知覚・認知に関わる情報を処理しています。これらの情報の物理的な実体は脳・神経活動の時空間パターンであり、脳がどのように多様な知覚・認知情報を表現しているかを知ること(脳の潜在情報表現を知ること)は、脳の理解やその各種応用において重要な意味を持ちます。特に昨今の各種機械学習/AIモデルの発展に伴い、脳とAIという似て非なる知的エージェント間における潜在情報表現の対照、あるいはそれらの融合を介した様々な研究パラダイムや応用の可能性が広がっています。本講演では、特にヒト脳内における情報表現を対象に、研究例の紹介と議論を行います。
9:00 -10:00 基礎講義
10:00-12:00 グループ討論
12:00-13:00 昼食
13:00-14:00 グループ発表
14:00-14:30 発展講義
解散