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第25回 日本神経回路学会 全国大会(JNNS2015)サテライト
若手スクール(NISS/ASCONE/SNSS)企画イベント
2015年9月1日(火)17:00-20:00 電気通信大学(東京都調布市)

このASCONEや、その前身のNISS、さらに システム神経生物学スプリングスクール(SNSS) の参加者たちがJNNS2015に集まり、若手スクールの経験を生かして活躍している現在の状況を報告し合いながら、交流を温め、研究成果を発表しました。

Poster Presentation

大脳新皮質の計算原理はなぜ理解困難なのか?

寺島裕貴 (NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
SNSS2011 SNSS2012 SNSS2013 SNSS2014 ASCONE2009 ASCONE2011 参加

大脳新皮質は多様な機能を呈す一方で共通の解剖学的構造を持ち、何らかの計算原理の存在が示唆されてきた。しかし今なお、原理の理解に程遠いのはなぜだろうか。本発表では、その本質的な壁が機能の領野間比較困難性にあることを指摘し、解決の方向性を議論する。

Simultaneous silence organizes structured higher-order interactions in neural populations

Shimazaki H (1), Sadeghi K (2), Ishikawa T (3), Ikegaya Y (3), *Toyoizumi T (1)
(1. RIKEN BSI, 2. Commonwealth Computer Research Inc., 3, Univ Tokyo)
* NISS2002 SNSS2005 SNSS2013 ASCONE2011 参加

Activity patterns of neural population are partially characterized by statistical dependencies among groups of neurons larger than two, known as higher-order interactions (HOIs). Here, we report that simultaneous silence (SS) of neurons concisely summarizes neural HOIs. The structured HOIs predicted by SS were also observed in a simple neural population model, suggesting that SS is a ubiquitous feature of HOIs that constrain neural activity patterns.

iSLR: fMRIデコーディングのための新たなパターン識別法の提案

*廣瀬智士(1), 南部功夫(2), 内藤栄一(1) (1. CiNet, NICT 2. 長岡技術科学大学)
* ASCONE2006 ASCONE2007 ASCONE2008 参加

本研究ではfMRIデータに有効な新しい判別アルゴリズムを提案する。fMRI decodingでは特徴量の自由度(ボクセル数:数万)に対して、観測数(試行数:数十〜数百)が非常に小さくover-fittingに陥りやすい。少数の必要なボクセルを自動的に選択し効果的にover-fittingを回避できる方法が提案されている (SLR, Yamashita et al., 2008)。しかしSLRは多くの情報を持つボクセルも捨ててしまうという弱点がある。この問題をアンサンブル学習で解決したIterative SLR (iSLR)では、SLRにより捨てられたボクセルを使って、再度判別器学習を行う。これを繰り返し、精製された複数のSLR学習の結果を統合する。

ポスターにてiSLRがover-fitting、over-pruningに強いというシミュレーション結果と、実データに適用した例を示す。

iSLRを含むfMRI classificationのためのMATLABツールボックスを公開しています。

http://www2.nict.go.jp/cinet/bnc/hirose/mvpc

パブロフ条件づけとインストゥルメンタル条件づけの様々な学習行動を再現する統合計算論モデル

*沖津健吾,酒井裕(玉川大)
* ASCONE2014 参加

動物の様々な学習行動は,これまで主にパブロフ条件づけやインストゥルメンタル条件づけの手続きを用いた実験で観測されてきた.この2種類の条件づけは異なる分野として位置づけられ,それぞれの現象を説明する計算論モデルは個別に提案されてきた.そのゆえ,2つの条件づけ間で影響を与え合う現象は再現できないのが現状である.本研究で我々は,パブロフ条件づけの計算論モデルであるレスコーラ-ワグナーモデルをインストゥルメンタル条件づけに拡張することで,2つの条件づけを統一的に説明できるような計算論モデルを提案した.そして提案モデルが,パブロフ条件づけの学習結果がインストゥルメンタル条件づけで形成された行動に影響を与える現象である,パブロフ-インストゥルメンタル転移(Pavlovian-to-Instrumental Transfer: PIT)を再現することをシミュレーションにより確認した.さらに,提案モデルはパブロフ条件づけ,インストゥルメンタル条件づけそれぞれの典型的な現象も再現した.この結果は,我々のモデルがパブロフ条件づけとインストゥルメンタル条件づけの学習メカニズムの候補である可能性を示唆している.

A voxelwise encoding model based on unsupervised language learning explains semantic representation in the human brain

*Nishida S (1,2), Huth AG (3), Gallant JL (3), Nishimoto S (1,2)
(1. NICT/CiNet, 2. Osaka Univ, 3. UC Berkeley)
*ASCONE2009 参加

順行伝播する教師信号を用いた新しいディープラーニングの学習法

篠崎隆志(情報通信研究機構)
NISS2003 SNSS2008 SNSS2012 参加

ディープラーニングとは脳の仕組みを模した多層ニューラルネットワークにおける機械学習の仕組みである.近年の計算機の進化との相性が良いこともあり,画像認識や音声認識などで従来法を大きく上回る性能を示している.ディープラーニングの多くは古典的な逆誤差伝播法を用いており,超大規模化が困難という問題があった.これに対して,私たちは先行伝播法という全く新しい学習法を提案した.手本を見せることによって正解を学習するというヒトの振る舞いにも似たこの学習法は,超大規模化にも適した特性も備える.

不規則自発発火回路が示す入力駆動の集団振動

*長野祥大 (東大), 唐木田亮 (東大), 渡邊紀文 (東京工科大), 青山敦 (慶應大), 岡田真人 (東大)
*ASCONE2013 ASCONE2014 参加

Low-frequency irregular neuronal firing occurs spontaneously in cortex. Such kind of internal noise is a fundamental characteristic of the local neuronal circuits. On the other hand, oscillations of neural activities are also widely observed in the same local circuits. Both the irregular noise and the oscillation are thought to play important roles in cognitive functions such as information encoding, binding, and selective attention. However, the mechanism which simultaneously realizes these two.

運動学習の統一理論モデル -運動学習における誤差の予測の重要性-

*瀧山健(学振 / 玉川大), 平島雅也(CiNet), 野崎大地(東大)
* SNSS2013 SNSS2014 ASCONE2007 ASCONE2009 ASCONE2011 ASCONE2012 ASCONE2013 参加

We propose a model to explain diverse features of motor learning in a unified way. The model assumes that the neural activity pattern is determined by the predicted movement error of an upcoming movement (prospective error). To validate this idea, we perform a behavioural experiment to examine the model’s novel prediction. Furthermore, we demonstrate that this model has a strong explanatory power to reproduce a wide variety of phenomena that have been separately explained by different models.

アンサンブルトラクトグラフィー法による白質線維束同定精度の向上

*竹村浩昌(CiNet, NICT), Brian Wandell (Stanford), Franco Pestilli (Indiana University)
* ASCONE2006 ASCONE2007 ASCONE2009 ASCONE2010 参加

トラクトグラフィー法は拡散強調MRIデータを基に生体脳の白質線維束を再構築する手法であり、今日白質の発達や疾患などに関する様々な研究に広く用いられています。しかしこれまでの研究で、トラクトグラフィーの出力結果にはパラメータ選択依存性があることが知られてきました。この発表では、トラクトグラフィーにおけるパラメータ選択性を低減するため、アンサンブルトラクトグラフィー法という新たな解析手法を用いることを提案します。

画像データに関する観測回数と観測精度のトレードオフ

坂本浩隆(1),中西(大野)義典(1,2),岡田真人(1,3)(1,東京大学,2.学振 特別研究員,3.理研BSI)
* ASCONE2014 参加

与えられた観測時間が限られている場合,撮像回数の増加にともなって観測精度が低下するトレードオフ関係が存在する.トレードオフの問題を扱うため,与えられた観測時間を全て使って1枚の画像を取得するone-shot法と,観測時間を分割し複数枚の画像を取得するmulti-shot法の比較を行う.比較はマルコフ確率場(MRF)モデルを用いた画像処理の性能によって行う.MRFモデルのハイパーパラメータが既知である場合における画像修復に関して,解析解から2つの手法が等価であることを示す.一方,MRFモデルのハイパーパラメータ推定の信頼度に関しては,数値実験からmulti-shot法が優れていることを示す.

参加者たちの現在

寺島 裕貴(NTT コミュニケーション科学基礎研究所) web

SNSS2011 SNSS2012 SNSS2013 SNSS2014 ASCONE2009 ASCONE2011
東京大学岡田研在籍中は若手スクールで経験を積み、2014年春に学位を得ました。NTT コミュニケーション科学基礎研究所に入所し、聴覚を中心とする計算神経科学に引き続き取り組んでいます。

五十嵐 康伸(株式会社ギブリー 研究員) web

NISS2002 NISS2003 SNSS2003 SNSS2004 SNSS2005 SNSS2006 SNSS2007 SNSS2010 ASCONE2008 参加
研究分野を神経→顕微鏡開発→発生→画像認識と変え現在はオープンイノベーションの研究をしています。 大学でアントレプレナー育成、産学連携を担当されていてハッカソン・アイデアソンの企画に困っている人がいらっしゃったら是非ご連絡下さい!

豊泉 太郎(RIKEN Brain Science Institute) web

NISS2002 SNSS2005 SNSS2013 ASCONE2011 参加

廣瀬 智士(CiNet, NICT PD) web

ASCONE2006 ASCONE2007 ASCONE2008 参加
ATRからCiNet, NICTに移って3年目になります。大阪万博記念公園の隣です。 数年前から作成していたMVPC toolbox (multi-voxel pattern classification)をようやく公開しました。是非お試しください!

佐々木 拓哉(東京大学大学院薬学系研究科薬品作用学教室 助教) web

SNSS2006 ASCONE2006 ASCONE2008 参加
海馬の神経回路の研究をしています。実験に興味のある方、大規模なデータ解析に興味のある方など、一緒に研究してくれる方がいらっしゃったらうれしいです。

西田 知史(情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター PD) web

ASCONE2009 参加
ASCONE2009参加当時は心理物理学と数理モデリングを組み合わせた研究を行っていましたが、その後サルの電気生理学研究に従事し、現在はNICT/CiNetでヒトを対象とした脳機能イメージング研究を行っています。これまでの多様な研究経験を活かし、自然知覚環境における視覚認知を実現する神経基盤の解明を目的に、数理モデリング手法を取り入れて脳内知覚・認知表象の定量可視化を行う研究に取り組んでいます。

川端 政則(玉川大学脳科学研究科 M2)

SNSS2014 ASCONE2014 参加
玉川大学の礒村・酒井研究室に進学しました。SNSSやASCONEに参加したことが転機となり、この研究分野・研究室を選ぶきっかけとなりました。まだまだ実験結果が少ないので今回はポスター発表できませんが、また皆さんといろいろお話できることを楽しみにしています。

瀧山 健(東京農工大学 特任准教授) web

SNSS2013 SNSS2014 ASCONE2007 ASCONE2009 ASCONE2011 ASCONE2012 ASCONE2013 参加
初めて参加した若手スクールASCONE2007のテーマは「知覚と運動を結ぶ脳機能」でした。現在私は「知覚された運動誤差が脳の状態を決定する運動学習の計算理論モデル」を提案しており、気づけば最初に参加した若手スクールのテーマに大きく影響されていました。私はまだおそらく若手研究者と名乗っても怒られない年齢だと思いますが、私よりも若い若手研究者に大きな影響を与える若手スクールに何かしらの形で携わっていければ、と思っています。

竹村 浩昌(情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター(CiNet) PD)

ASCONE2006 ASCONE2007 ASCONE2009 ASCONE2010 参加
昨年3月まで3年間Stanford大学でポスドクをしており、4月から帰国しました。現在は大阪のCiNetで研究を続けています。

本田 直樹(京都大学医学研究科 特定准教授) web

NISS2003 SNSS2004 SNSS2005 SNSS2006 SNSS2007 SNSS2008 SNSS2009 SNSS2010 SNSS2011 SNSS2012 SNSS2013 SNSS2014 SNSS2015 ASCONE2008 ASCONE2009 参加

運営

鮫島 和行(玉川大学 脳科学研究所)
酒井 裕 (玉川大学 脳科学研究所)