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日本神経回路学会 オータムスクール

ASCONE2025

Autumn School for Computational Neuroscience

2025年11月5日(水)〜 11月8日(土)  ホテル一宮シーサイドオーツカ(JR上総一ノ宮駅)

厳正な選考の結果、22名の採用を決定いたしました。

講義スケジュール

1講師1トピックについて、以下のスケジュールで行っていきます。
  1. 「基礎講義」(約1時間)
    問題意識までの導入を行います。 例えば、不思議な脳の現象などを紹介し、 その問題を考えるための材料を提供します。
  2. 「グループ討論」(約2〜3時間)
    小グループに分かれて、提示された問題について自ら考えながら、 チューター、講師らと共に討論します。 最終的にそのグループの意見として全体に発表できるように、 意見をまとめていきます。
  3. 「グループ発表」(約30分)
    各グループで行った討論の結果を代表者が全体に発表します。
  4. 「発展講義」(約30分)
    講師による解説を行います。

11月5日

14:20- 受付 (昼食を済ませてから集合してください)

14:50- 開催の辞

Lecture I: 『「感覚-意思決定-運動」の脳統合神経機構』

佐々木 亮(生理学研究所)


我々ヒトを含む動物の柔軟な意思決定、巧みな感覚運動は知られているよりも、もっと複雑で多様なはずです。しかし、これまでの認知神経科学研究は、極めて単純化された実験課題が用いられており、自然界における動物本来の能力を発揮させるには限界がありました。一方、自由行動下での無秩序な実験系では、実験的に制御できない要因が増えすぎてしまいます。これらの問題を一挙に解決できる手法として、ヴァーチャルリアリティ (VR)を導入した実験系が挙げられます。動物の日常的かつ自然に近い環境を提供しながらも、ほとんどの要因を制御可能となります。こうした利点を生かし、今後の研究の展開として、動物一個体が環境適応するために複数の戦略を自在に駆使し、柔軟に切り替える『感覚-意思決定-運動』を一連とした脳統合神経機構に注目しています。

基礎講義ではまず、主にマカクザルをモデル動物とする一般的な認知神経科学研究を紹介します。具体的には、物体・身体の運動知覚、報酬獲得戦略、空間認知などをとり挙げます。グループ討論では、『感覚-意思決定-運動』の脳統合神経機構をテーマとした、新規共同プロジェクトを提案していただきます。今後のニューロサイエンス研究の発展・方向性について議論し、重要で注目される研究についての洞察を養うことを目指します。発展講義では、新規課題としてVRを駆使して多時空間に発展拡張させた、ナビゲーション、追跡・回避行動などをとり挙げます。

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

18:00-19:00 夕食・ポスター

19:00-20:00 グループ発表

20:00-20:30 発展講義

11月6日

Lecture II: 『不確実な環境での意思決定と“確信度”:行動・数理・神経活動』

田中 康裕(玉川大学)


私たちは不確実な環境の中で日々何らかの判断を下している。そのたびに、自らの選択に対して「その判断は本当に正しかったのか?」という“確信度”が立ち上がる。こうした確信の程度は、自らの行動を省みて次によりよい判断をするために重要な認知過程と考えられ、しばしばメタ認知と呼ばれてきた。そして、確信度は主観的な感覚にすぎないようでいて、外部から数理的にも定義でき、さらに行動を通じて客観的に測定しようとする試みが重ねられている。本講演では、行動指標・数理的定式化・神経活動の三つの観点から確信度研究の現状を概観し、行動と数理、そして脳を結ぶアプローチの一例を示したい。また、確信度という概念は実験室における研究対象であると同時に、本質的に不確実な世界を生きる私たちにとって避けて通れないものでもある。すなわち、確信度をめぐる問いは私たち自身が「よく生きる」ための問いともいえる。

9:00-10:00 基礎講義

10:00-12:00 グループ討論

12:00-13:00 昼食・ポスター

13:00-14:00 グループ発表

14:00-14:30 発展講義

Lecture III: 『脳オルガノイドに学ばせるには』

池内 与志穂(東京大学)


ヒトiPS細胞を三次元培養すると、自発的に多様な細胞集団が層構造をもつ組織へ自己組織化する。これが脳オルガノイドであり、将来的に脳様の情報処理を担うことが期待される。もし培養回路に自在に「学習」させるための条件を理解し、実験的に達成することができれば神経科学に新たな実験基盤を拓ける。しかし現状、脳オルガノイドを自在に学ばせる段階には至っていない。本講義では最新研究を踏まえて現状を批判的に整理し、学習に必要な回路構造・細胞特性・駆動因子などを議論し、そのための実験的な枠組みや機能の定量法を討論する。

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

18:00-19:00 夕食・ポスター

19:00-20:00 グループ発表

20:00-20:30 発展講義

11月7日

Lecture IV: 『脳に「余白」はあるか?』

宮脇 陽一(電気通信大学)


ヒトは生まれながらに持つ身体を使いこなせるように学習し、発達していく。では、もし生まれながらに持たない新しい身体部位が授けられたとき、ヒトはそれを自らの身体の一部として受け入れるのだろうか?こうした問いに挑戦するため、私たちは機械で作った新しい身体部位をヒトが装着したとき、それが自らの身体の一部として「身体化」するのか、そして脳はそれをどのように表現し、取り込むのかを研究している。

こうした問いをさらに抽象化した視点から眺めると、それは脳の「余白」―神経活動で表現可能な情報空間の余剰部分―に新たなメスを入れる全く新しい研究アプローチになりえると私たちは考えている。本講義では、私がこれまで行ってきた新しい身体部位の身体化の講演内容とは一線を画し、神経多様体、余剰次元などの基礎概念から出発し、free neural activityに基づく神経拡張へと至る大胆な仮説を提案する。こうした仮説を実証するためのモデル解析や簡単な知覚実験を紹介しつつ、(可能であれば)実際に手を動かし体験しながら、参加者の皆さんとヒト脳機能の拡張可能性を探求したい。

9:00-10:00 基礎講義

10:00-12:00 グループ討論

12:00-13:00 昼食

13:00-14:00 グループ発表

14:00-14:30 発展講義

Lecture V: 『認知神経科学から臨床への橋渡しの試み』

大須 理英子(早稲田大学)


認知神経科学では、脳を情報処理装置ととらえ、そのしくみを探ることから「心」と「身体」にアプローチします。例えば、私たちは日々多くの情報に触れていますが、脳は、全てを取り入れるのではなく、必要な情報を選別しています。一方で、意識にのぼらない多くの情報を取り入れており、私たちの意思決定や気分・情動は、このような潜在的情報によって大きく影響を受けています。加えて、脳は、経験や学習によって情報を獲得することによって世界を理解し制御します。このような情報処理がうまく働かなくなると、こころや身体に不調をきたします。また、脳の情報処理には多様性があることもわかってきました。このような脳のしくみを理解することで健全な心身の維持や機能の改善に貢献することが期待できます。

本講義では、脳活動の計測や非侵襲刺激による脳や神経への介入、計算モデルなどを組み合わせ、神経疾患や精神疾患、神経発達症、さらにはウェルビーイングにアプローチする試みを紹介します。

15:00-16:00 基礎講義

16:00-18:00 グループ討論

18:00-19:00 夕食・ポスター

19:00-20:00 グループ発表

20:00-20:30 発展講義

11月8日

Lecture VI: 『オープンデータサイエンスからの挑戦状』

中江 健(福井大学)


近年、神経科学に関係した様々なデータが公開され、実際に実験せずとも自分の興味に従った解析を行い論文まで出版できる時代になってきています。このような流れから、発表者が所属している学術変革領域A「行動変容生物学」では行動変容を理解するためのリソースとして、マウスのオペラント学習課題における包括的なデータを公開しました。

このデータでは、2週間におよぶ学習過程とその際の全脳の活動をカルシウムイメージングで計測しています。さらにこれと同時に高速ビデオ撮影を行い、体、顔、目や環境パラメータを計測し、様々な解析ができるようにしました。そして、これらのデータは現在神経科学において標準的なフォーマットと呼ばれるNeurodata without Borders (NWB)形式を利用し、再利用性を高めています。

今回の演習ではASCONEの最終日を飾るべく、最高難易度の課題として2時間という短時間でデータを解析して成果をだして発表していただきます。解説やチュートリアルは行いますが、事前学習は歓迎します。 以下の 論文 や、 チュートリアル を事前にしていただいても構いません。いずれにせよ、ASCONEに参加された皆さんの実力を見せていただきたいと思います。

9:00-10:00 データベース説明・チュートリアル

10:00-12:00 データ解析

12:00-13:00 昼食

13:00-13:30 グループ発表資料作成

13:30-14:30 グループ発表

14:30-15:00 発展講義

解散

参加者の体験記

日本神経回路学会誌にASCONE2025の体験記が掲載されています。

砂間 栞奈(順天堂大学 スポーツ健康科学研究科 M1)

「ASCONE体験記:脳科学の入り口に立って」

竹中 桐花(神戸大学大学院 保健学研究科 M1)

「ASCONE体験記:脳のハードプロブレムを追い求める溌剌とした勇気」

吉田 昂祐(東京大学大学院 広域科学専攻 M1)、冨樫 悠(東京大学大学院 総合文化研究科 M1)

「ASCONE体験記:なぜASCONEがこれほど人気なのかを参加者が語ってみる」

参加者からのメッセージ(一部)

深沢 仁貴(早稲田大学 先進理工学部 生命医科学科 B4)

少しでも興味があるなら日程を確保して応募することをお勧めします。「脳を理解したい」は共通していても、各自の視点は多様で刺激的でした。理論や計算のバックグラウンドがない私でも楽しめ、得るものは大きかったです。参加者の研究内容は分かっても、研究以外の顔は謎のまま。その不思議さごと楽しい会でした。

砂間 栞奈(順天堂大学 スポーツ健康科学研究科 M1)

日を追うごとに楽しくなっていったように感じる。きっと劣等感みたいなものを持って参加してしまったのだと思う。参加者の方々は立場や年齢なんて気にせず、純粋な好奇心や探究心を持っていた。なんの知識もない私が,,,と考えている時間は無駄で、知らないことはそこで知ればいいし、知っている人と協力すればいい。参加するにあたって最も大切なのは「自分の範囲外のことを楽しめるか」だと思う。人間としての成長が研究の成長にも繋がると感じられる4日間でした。

大野 颯斗(東京大学 情報理工学系研究科 D1)

非常に濃密な4日間でした。認知科学・神経科学・医学など、多様なバックグラウンドを持った人たちと、「脳」という一つの興味のもとに集まり、議論を深めることは非常に楽しかったです。また、同世代の研究者の思考や知識に触れる中で、自分の強みや課題を見つめ直し、「研究者としての現在地」を具体的に把握できたことも大きな収穫でした。ですが何よりも、興味関心が近く、率直に研究の話ができる仲間と出会えたことこそ、ASCONEに参加した最大の成果だと思います。脳に興味を持ち、その魅力について真剣に語り合える仲間を求めている方には、ぜひ参加をお勧めしたいです。

原 愛珠 (早稲田大学 文学部 B4)

朝から晩まで脳のことで頭がいっぱいの4日間でした。講義内容にあまり馴染みがなく,不安を抱えながらの参加でしたが,個人が持ちうる知識や発想を持ち寄って手を動かしてみると,面白いものが見えてくるという経験ができたことは貴重だと思います。何よりも運営スタッフ・講師陣の皆さんの熱の入り方が凄く,参加者がぶつける疑問に真正面から向き合い,ディスカッションしてくださる大人がいることのあたたかさも感じました。

折井 森音(東京大学 医学部 B6)

滞在地や講師の先生方の素晴らしさについては言うまでもありませんが、本行事の魅力はひとえに受講生同士の濃密な交流にあります。みんな知識や技術だけでなく知的好奇心や行動力が無尽蔵であり、彼らの尖った個性は、脳神経科学に関する議論はもちろんのこと、食卓や温泉などでの何気ない雑談の中でさえも煌めいていました。単なる「勉強合宿」の枠を超えた、最高級にinspiringな4日間を希望する方はぜひ応募してみてください。

冨樫 悠(東京大学大学院 総合文化研究科 M1)

主観とは何なのか、他者の世界はどのように理解できるのか、自己はどこに宿るのか、人はいかに幸せになれるのか……こうした普遍的で大きな問題について、参加者のバックグラウンドを超え、学生と講師陣の垣根を超えて、時には夜が更けても(!)全力で語り尽くした経験はかけがえのないものとなりました。分野や知識、経験を問わず、脳にまつわる大きな問いをぶつけたい!という人に自信をもって参加をおすすめします。

荻原 怜雄(東京大学 薬学部 B3)

ASCONEでは昼夜を問わず議論が続き、計算論的神経科学に惹かれた多様なバックグラウンドの参加者から、ここでしか生まれない視点が次々と飛び出します。これ以上のオータムスクールはないといえるほど、研究経験の少ない学部生にとっても、今後の研究人生を大きく方向づける貴重な機会となるはずです。ぜひ勇気を出して参加してみてください。

山田 燎(東京大学大学院 総合文化研究科 D1)

学年や専門といった属性、論文化や業績といった成果を意識することなく、ただ純粋にアイデアをぶつけ合える。そんな貴重な場でした。講師の先生が投げかける“種”に対して、参加者全員が刺激を与え合いながら、何かとは明確に言えないけれど確かに「新しい何か」を形づくっていく。この創発的な体験は、ASCONEでしか味わえないと思います。もし今の研究や環境、そして人生そのものに少しでも閉塞感を感じているなら、ぜひ参加してみてください。自分の中の「思考する」という感覚が、きっと揺さぶられるはずです。

小久保 廉汰(宮崎大学 工学部 B4)

年齢も所属も異なる聡明な学生らと、年齢も所属も気にすることなく交流出来る4日間です。「脳神経科学が好き」という、たったそれだけの共通点があれば友人になるには十分でしょう。また、仮にこれを読んでいるあなたが神経生理学知識不足を理由に応募を諦めようとしているのならば、それは大きな間違いです。参加する学生は必ずしも神経生理学に精通しているわけではなく、多様なバックグラウンドを持っています。自分の存在が議論に更なる彩りを与えると思って、自信を持って応募しちゃいましょう。

平澤 優依(東海大学 情報通信学部 B3)

熱意ある参加者と率直な意見交換ができる、非常に刺激的な場です。学びへの刺激と、交流による素敵な縁の両方が得られる素晴らしい会です。

塩谷 佳介(東京大学大学院 複雑理工学専攻 D3)

「ここにいたんだ、誘ったら喜んでついてきてくれそうな連中が」
今回のイベントで、漫画『宇宙兄弟』のこんなセリフを思い出しました。私は身近に脳を専門とする人が少なく、同分野の人との議論がしたいと思い参加しました。グループワークでは専門を超えて、時に意見の相違もありながら全員で議論を重ねました。また、講義以外の時間でも各々が自分の"好き"を目を輝かせて語っていたことが強く印象に残っています。あなたの熱量を受け止めてくれる仲間が、きっとASCONEにはいます。迷ったらぜひ応募してみて下さい。

林 孝信(京都大学 医学部医学科 B4)

3泊4日、朝から晩までずっと語り合いました。生物、医学、数学、物理、情報。分野を超えた議論は自分の知識・視野の狭さを痛感させるとともに、多様な分野を巻き込みまた巻き込んでしてもなお困難な脳科学の奥深さを見せてくれました。これらの気づきは全て、自分の率直な「なぜ?」を共有できたからであり、先生・参加者の方々には感謝しかありません。まずは1000字にありったけをぶつけてください! ASCONEはそこからもう始まってます!

運営

寺島 裕貴(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
平 理一郎(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
瀧山 健 (東京農工大学 工学研究院)
船水 章大(東京大学 定量生命科学研究所)
佐々木 拓哉(東北大学 薬学部)
近藤 将史(東京大学大学院 医学系研究科)
鮫島 和行(玉川大学 脳科学研究所)
酒井 裕 (玉川大学 脳科学研究所)

主催

日本神経回路学会

共催

学術変革領域(文部科学省 科学研究費補助金)